令和三年活度報告

靖国神社研修会を終えて

毛利 ゆき乃

 

世の中が尚も新型コロナウイルスの影響を受ける中、毎年行われていた「靖国神社みたまつり参拝研修」が二年連続の延期となりました。そこで長野県神道青年会では、令和三年八月五日、南安曇支部 洲波神社宮司で靖国神社元職員の宮澤佳廣先生をお招きして「靖国神社研修会」を開催するに至りました。

 

今回の研修会は穂高神社参集殿とWeb上のハイブリッド形式の開催で、これまで長野県神道青年会では総会や役員会のWeb会議は行っていましたが、研修会としてのweb上の開催は初めての試みとなりました。私は現地に行くことが難しかったのでWeb上で参加させて頂きました。参加者は本会場十二名、web参加三名の総勢十五名の参加でした。

 

今回の研修は『現代社会と靖国神社「靖国の公共性」をめぐって』と言うテーマで進められました。

令和元年、御創立百五十年を迎えた靖国神社は、この先国家によって管理されていた時代より宗教法人としての靖国神社の時代が長くなっていく中で、靖国神社の御祭神と直接的に関わり合いのあるご遺族は減少していく事になります。そうした中で、あらためて靖国神社のあり方「靖国神社の公共性」をめぐる問題を考えていく必要があると、宮澤先生はお話し下さいました。今回先生のお話をお聞きし、お恥ずかしながら、自分自身の知識の無さを痛感したというのがこの研修の一番思うところで、本来ならば先生の著書『靖国神社が消える日』を拝読して研修に臨むべきところを研修後に拝読させて頂き、足りない脳で理解を深めようとしている最中であります。

 

靖国神社の御祭神は、国家防衛と公務のために死没した御神霊がお祀りされているわけですが、宮澤先生のご講義や著書によると、その合祀基準は時代の推移とともに変遷は見られるものの、慶応4年に出された「殉難者布告」と「戦死者布告」と言う二つの太政官布告が、その基礎に据えられてこんにちに至っているそうです。それぞれの布告には「国事」と「王事」と言う言葉が出てきており、「靖国の神」として祀られる資格と条件は、漠然とした「国事に関係して死没した者」ではなく、「朝命を奉じて国事のために死没した者」であり、これは国家が靖国神社の公共性を認めているということになります。

 

こうしたことから、靖国神社は、国家防衛という公務のために死没した246万6000余柱の御神霊を祀る国の施設「official」であり、国民「common」が国家の平安を祈るために設けられた施設であることがわかります。

 

著書の終盤には、「戦後72年が経過して(平成二十九年発刊)遺族の世代交代は進み、新たな遺族が生まれないという平和な時代が続くことは、靖国の理念が具現されていることの証」とあり、「現代社会における靖国の果たすべき役割(社会的機能)は今後ますます大きくなるだろう」とのお考えが書かれています。

 

御祭神と直接的に関わり合いのあるご遺族は減少していきますが、御英霊に対しての慰霊顕彰の思いは、戦争を知らないすべての国民に受け継がれていくべきだと思います。それをどのようにして伝えていくべきか、私たち神職に課せられた課題でもあるのではないでしょうか。

 

お話の中で、「靖国の公共性」を守っていくには「人の意識が変わらいこと」が重要で「原点を振り返り論理的で冷静な態度」をもって考えていけば自ずとそれが可能であるとおっしゃっておりました。人はその時の状況や感情だけで物事を捉えてしまう事がありますが、靖国神社だけでなく、時代とともに変化していく神社の有り方においても、原点を振り返り論理的で冷静な判断をしていく必要があるのではないかと感じました。

 

今回の研修は、先にも述べたように、自分自身もっと知識を増やしていかなければいけないと痛感した研修であり、実際に靖国神社でご奉仕されていた神職さんのお話を直に聞かせて頂けるとても実りある研修でした。宮澤先生には、コロナ禍の大変な中、貴重なお話を賜り感謝申し上げます。また、研修を主催された教化委員会の皆さんにも重ねて御礼申し上げます。コロナが落ち着いたら、会員みんなで靖国参拝に行きましょう。

 

さて、今回パソコン画面越しに講義を受けた訳ですが、パソコン上には宮澤先生とweb参加の会員、そして司会席の画面が映っていました。研修を受ける上では、これで十分だと思いますが、本会場での参加者が見えない分、どうしても現場の空気感は伝わりにくく、本会場との温度差が出てしまうと言うのがハイブリット形式の難点であり、今後の課題なのかなと感じました。とは言え、web上で研修に参加出来るという事は、今まで参加できなかった会員も参加しやすい環境になっているのは確かです。コロナ前のように、お酒を酌み交わす機会は減ってしまい残念ではありますが、研修会や委員会など、新しい形で多くの会員の参加が増え、長野県神道青年会の活動がますます盛り上がっていく事に期待したいです。

 

 

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